先生、甘い診察してください



「おーい。あやちゃーん。どした?」


我に返ると、目の前には先生の顔のアップが。



「…さっきの子は?」

「陽菜ちゃんなら帰ったよ。どうしたの?今日は」


大橋先生にとっては、陽菜ちゃんって子も、ただの患者さんでしかないのかな?




「…実は、先生にお願いがあって……」


とにかく今は、ここにきた目的を果たそう。




「お願い?なぁに~?」

「勉強を……教えてほしいなって」



意外とサラリと言えた。




「もうすぐテストなんです」


断られちゃうかなって、ちょっと弱気思考になってたけど、



「うん、いいよ」


あっさりOKをもらえた。


やっぱり勇気、出してみるもんだなぁ。




「早速今日から始めようか」


なんか予想外の展開だなぁ。嬉しいからいいけど。




「場所は……僕の家でいい?」

「えぇっ!!」


これまた予想外っ!!



「診療時間が終わるまで、ここの休憩室で待っててくれる?」

「はい……」



あ、でも、お兄ちゃんには何て言おう?



「翔太くんには適当に言っておくから。安心して」

「はい。わかりました」




診察時間が終るまで、私は診察室の奥の休憩室で待たせてもらった。



休憩室で本を読んだり、仕事をサボる櫻田先生と雑談したりしてるうちに時間は緩やかに流れていった。