先生、甘い診察してください



放課後。



「……来ちゃった」



通院の日でもないのに、歯医者さんの前にいます。


今日頼んでみる事にした。





中に入ると、待合室にも受付にも誰もいなかった。




待合室のソファーに座って、少し経った頃だった。


診察室のドアが開いた。



中から出てきたのは、私と同じ年くらいの女の子。と、大橋先生。


「よくがんばったねー。偉かったよ」

「も、もぉ。また子供扱いして……」

「だってまだまだ子供じゃーん」

「子供じゃないですよ。もう、大人だもん」


大橋先生は笑いながら、その女の子の頭を撫でた。




それを見て、胸が苦しくなった。


先生、他の患者さんにもそういう事、するんだね。

そんな風に笑うんですね。





「あれ、あやちゃん?」



私に気づいた大橋先生が、女の子から離れて、私のそばに来た。


やっぱ、止めておけばよかったかも……。




「ねぇ、先生……」

「あ、ごめんごめん。陽菜ちゃん、今度の治療は一週間後でいい?」

「はい」



あの子、陽菜ちゃんっていうんだ。



顔、小さい。

目、大きい。


色も白くて、唇もぷっくりしてて、髪の毛は長くてサラサラ。

栗色の綺麗な髪。


すごく、可愛い……。



大橋先生には、ああいう可愛い子の方が……釣り合ってるかもしれない。