「そういう事……?」

「だ、だから、す、好きとか……」


もちろん、深い意味で言ったわけじゃなくて何気なく言っただけだろう。




「はっくしょん……!」


少し緊迫した空気の中、また大きなクシャミが。



「ヤバイ、湯冷めするかも。Tシャツ着ようっと」


先生はリビングから出て行った。



いろんなお話が聞けたのは嬉しいけど……この複雑な気持ちは、何?




先生のしてる事は思わせぶりな事ばっか。


私を翻弄して楽しんでる?それともただ天然なだけ?



「あー、わからないっ!」

「何がわからないの?」

「っ!!」


……いつの間に戻ってきたんだろう?




「……あの、また質問していいですか?」

「いいよ」


聞きたい事を聞くなら、今が絶好のチャンスかもしれない。




「先生にとって、患者さんは恋愛対象外なんですか?」


この質問、答えによっては、私自身が傷つく事になる。




「まぁ、医者と患者っていう一線は、簡単に越えるもんじゃないと思う。患者さんを恋愛対象ってのは、ちょっと……」


案の定、傷つく事になる返答だった。


だったら、どうして……。





「なんで私には、思わせぶりな事ばっかりするんですか?先生のする事は、ズルイです……」


私は真っ直ぐに先生を見つめた。