「でも、僕らの中で、1番患者さんの気持ちを理解してるのは、純なんだよ」
先生は首にかけたタオルで、髪の毛を拭きながら言葉を続けた。
「純は昔から、よく虫歯になってたみたいだから、虫歯の辛さとか、治療の恐怖心を1番わかってる」
言われてみれば、そうか……。
「あいつ、いつも患者さんに恐怖や不安を与えないように細心の注意をしてる。どんなに疲れてる時でも、常に笑顔だし」
自分もしょっちゅう虫歯になるからこそ、患者さんの気持ちが痛いくらいわかるって事か。
「でも僕も一応、患者さんに恐怖心とか与えないよう、努力してますっ!」
笑いながらピースサインした先生に、
「私が通院できてるの、先生のおかげなんですよ?先生の治療、ちっとも怖くないから」
そう言って、私もつられて笑った。
「ありがとう。あやちゃんは、素直だね。そういう所、好きだな……」
「っ……」
サラリと漏れた衝撃発言。
適当に聞き流せばいいんだろうけど……。
「思わせぶりな事はしない主義なら、そういう事はあんまり言わないでください」
聞き流すなんて、無理……。
どうしても期待する自分がいるから。

