しばらく走って着いたのは、大きいマンション。
……まさかとは思うけど。
「ここって」
「僕の家だよ」
やっぱり!!
「雨宿りしていくといいよ。たいしたおもてなしはできないけど」
喫茶店の後に先生の自宅って……完璧、カップルのデートコースじゃん!
「あ、あの……ちょっと」
「もしかして用事があった?」
「いえ……」
用事はないけど、男の人の家に上がった事なんて一度もないよ。日向くんの家にすら行った事ないのに。
「じゃあ、おいでよ。雨が止むまでの間、ね?」
断る理由がない。
雨が止む間だけなら……。
「ソファーに座ってて」
先生の住んでる部屋はマンションの最上階の一番角。
広くて、殺風景な室内。全然散らかってない。きちんと整頓されてる。
「はい、タオル。これで体拭いて?」
「ありがとうございます……」
髪の毛は、先生のパーカーのおかげでほとんど濡れなかったけど、服は濡れちゃった。特に足がビショビショ。
今……この空間に、私と先生の2人きり。
今日は生まれて初めての事ばかりだ。

