「あ、私も一緒に行っていいですか?」
「えっ……」
「家にいても暇ですし」
琉璃ちゃんは今日、光平くんと映画に行くんだって。
「いい、けど……」
いつもなら、歓迎してくれるのに…。
何故かこの時の智也さんは浮かない表情だった。
その理由は、意外とすぐにわかった。
喫茶店を出て、手を繋いで歩いて、医院の近くまで来た時だった、
「智也先生っ……」
医院の前に女の子が立ってて、その子は智也さんの方を見るなり走ってきて、
「ちょ…ちょっと…」
彼に、抱きついた。
私は唖然とするばかり。
その子は智也さんと親しそうにしてた子…陽菜ちゃんだった…。
「先生っ……」
「陽菜ちゃん…とりあえず離れて?」
智也さんは無理矢理引き離す事なく、ポンポンと陽菜ちゃんの頭を撫でた。
「……」
何か…嫌だな。
こういう場面を、間近で見るの…。

