「なぁ、あや…あの人って」
「……」
「……あや?」
せっかく、大橋先生が会いに来てくれたのに……。
私、逃げちゃった。
「あや、お前…まさかとは思うけど、あの人の事……」
頭の中がグチャグチャで、今の私には日向くんの言葉が耳に入ってこなかった。
そして次の日の放課後も、私は驚く事になる。
「…嘘……」
校内から出て、門の前を見た時、正直絶句した。
だって門の前には、昨日と同じように白衣姿のまま佇む大橋先生がいた。
何で、また来たの?
私…昨日、あんな態度取ったのに……。
目を合わさないようにして、通り過ぎようとした。
だけど、
「あやちゃん……」
大橋先生の横を通った時、すかさず腕を掴まれた。
今日は日向くんが一緒じゃないし、琉璃ちゃんも一緒じゃない。
どうしよう、この状況。
「ねぇ、歯…かなり痛むんじゃないの?すぐに治した方がいいよ」
「…あくまで、歯の心配、するんですね」
「……うん」
「離してください……」
手をふり払おうと試みてみたけど、全く振りほどけない。

