文化祭の準備が始まってから、帰りが遅くなる事が多々あった。
みんなはワクワクしてるけど、私は複雑。
「はぁ……」
廊下を歩きながら、ため息が漏れた。
琉璃ちゃんは光平くんと帰るみたい。
今日こそは……大橋先生に会おうかな……。
「あや」
「ひゃあっ!!」
急にすぐ後ろで声がしたもんだからビックリした。
「そんなに驚くなよ。面白いなぁ」
振り向くと、カバンを持って笑ってる日向くん。
「今帰り?よかったら一緒に帰ろ。今日は部活ないから」
「うん……」
よかった、偶然日向くんに会って。1人より、2人の方が気が紛れるから。
「もうすぐ文化祭だな~。あやのクラスは何やるの?」
「それが……メイド喫茶」
無難に演劇かな~って思ったら、何故かメイド喫茶になった。
女子はみんなメイド服きて接客。男子達は裏方。
「……お前、メイド服着るの?」
「うん、多分そうなるね」
メイド服って、レンタルしてくるのかな?
それとも各自用意?
「着ない方がいいんじゃないか?」
日向くんの言葉に、少しムッとした。
「確かに私、そういうの…似合わないよね」
着てみたいって憧れはあるけど。
「あー、もう!!そうじゃなくて」
右手で頭をクシャクシャっとした後、日向くんはチラッと私を見て、
「悪い害虫が寄ってくるじゃん」
意味不明な言葉をボソッと呟いた。

