憂鬱な気持ちで、診察室に入った。消毒液の独特な匂いが更に強くなった。


「そんなに緊張する事ないよ?」

「リラックスする方が無理…」


歯医者さんなんて、来るの初めてだもん。



「あや、ここに…座れるかな?」

「…う、ん」


手を引かれて、促されるがままに、診察台へと座った。



チラッと横を見ると、トレイには尖った器具とかが並べてあって、それが余計に恐怖心をかきたてた。




「…本当に大丈夫?治療するの、俺じゃなくて他の先生でも平気?」


ガチガチに緊張した私を気遣ってか、お兄ちゃんの口からそんな言葉が飛び出した。



「やっぱり…俺が治療しようか?」


他の先生にってのも怖いけど、お兄ちゃんに治療してもらうのは、もっと嫌。



「ううん。大丈夫だよ」

「無理しなくていいよ?正直に言ってくれていいんだよ?」


お兄ちゃんの過保護ぶりには、本当に呆れちゃう…。