結局、大橋先生に会う事はないまま、気がつけば、夏休みは終盤を迎えていた。
夏休み中、琉璃ちゃんと何度か遊んだり、日向くんがうちに来たりして、それなりに楽しかった。
でもやっぱり、心の穴は埋まる事はなかった。
そんな中、ついに恐れていた事が起きてしまった。
「んっ。痛いっ……」
夕飯を食べてると、ズキンと左側の歯に走った痛み。
慌てて頬を押さえた。
「…あや、大丈夫?」
久々に感じた痛み。この感じは、紛れもなく……。
「歯、痛くなっちゃった……?」
認めたくないけど、また新しく虫歯ができたみたい。
フラれてから、封印してた甘い物をよく食べるようになった気がする。
甘い物は控えて、っていう警告を完全に無視して……。
「ねぇ、そろそろさ……」
「大丈夫だから!!これくらいの痛み……我慢できるもん」
「あや……」
お兄ちゃんは、それ以上何も言ってこなくなった。
何でこんなタイミングで、歯が痛くなるわけ?
失恋の痛みみたい……。

