「…そのままの意味よ、小雛。
真の妖王として覚醒するためには鵺姫の身が必要。
でも鵺姫はその身を捧げると、人間でも妖怪でもない者になる」




そしてお母さんは首を横に振って、悲しそうに瞳を揺らした。




「人間でも妖怪でもない者になるならまだマシよ。
ここには記されていないけれど、歴代の身を捧げた鵺姫の中には自我を保てず暴走し、愛する妖王の手で殺された鵺姫もいたと聞いたわ」


「…妖王に……殺された…!?」




殺されることがあるなんて、考えたことなかった。
三篠が妖王になって、私は隣で笑っていられると思ってた。




もし自我を保てなかったら、私は三篠に殺される……
こんなこと考えたくもない。




怖い。
身を捧げて自分が自分じゃなくなることが、恐ろしい。




でもこれは鵺姫に起こる運命。
狂愛ノ書にも書いてあるように、この運命は必然。




私はいつか妖王になる三篠にこの身を捧げなければならない。
私が捧げなければ、三篠は妖王の力を手に入れられない。




三篠に殺されない運命を辿ったとしても、私は人間じゃなくなる。そして妖怪でもない。




ふと三篠を見つめる。
この事実は三篠も知らなかったのか、悔しそうに鋭い表情を浮かべている。




そして三篠の手は血が出るんじゃないかと思うくらいに強く握られていた。