これでもかってくらいうるうるした瞳。


背中に回っている腕があたしをガッチリとロックしていて、この距離から逃げる事が出来ない。


つまり、あたしは絶体絶命!


「怜先輩、俺の名前呼んでください」

「え、と…」


甘い声が誘惑する。

あたしの頭を麻痺させる。


全身に伝わる夏目君の匂いが、あたしをおかしくさせる。


「…ゆ、裕貴…君…っ」

「もう一度」

「…裕貴、君…」


初めて呼んだ名前。

それなのにどこかしっくりくる。


どうしてなのか分からないけど、名前を呼ぶ度に好きが増していく。


「怜先輩、好き。…大好き。」


その声と共に夏目君の顔が徐々に近づいてきて、自然と目を瞑ると


温かい唇が重なった。


夏目君のキスは優しくて壊れものを扱うみたいに包み込むような、そんなキス。


これが、生まれて初めてのファーストキスーー…。