タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

あたしはオズオズと前へ進み出た。


心臓はバックバク。剣を握る手は汗でびっしょり。ヒザがガクガク震えてる。


でも今さら後に引けない、逃げられない。


あぁ、あたしの人生ってつまり、どこまでも悲惨って事なんだ。


なんだか投げやりな気分になって、目が潤んできた。


どうせ負けるなら棄権しちゃおうか? こんなことしたって意味ないもん。


そして結局あたしは、奴隷身分のままで、いつかはバカだんなに見つかって・・・


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫人! 私がお相手いたそう!」


対戦相手の声が聞こえてきて、あたしはふと我に返った。


・・・え? この声・・・?


「ご婦人とはいえ、勝負は勝負! 手加減はいたしませんぞ!」


・・・・・・。


「さあ剣を構えられよ! 男爵夫人!」


あたしは目と口をポカンと開けて、向かい合って立ってる相手を見つめた。


ば・・・・・。


・・・・・・バカだんなあぁぁーーー!!?


間違いようもない、あれ、確かにバカだんなだ!


なにしてんのあんた! こんなとこで!


・・・あ、そうか、あの一家も一応貴族だったっけ。


そうは思えないほど俗物な一家だったから、すっかり失念してたけど。