タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

ここからあたし、どうすりゃいいの?


絶対に勝たなきゃならないのに、勝てる見込みはゼロ。


競走馬のレースに乳牛が出場するようなもんだもの。根本からして間違ってるんだって。


自分の手にした短剣を眺めていると、どんどん怖気づいてくる。


これは明らかに凶器。人を殺傷する為の物。


キッチンナイフでイモや鳥肉を刻むのとは、わけが違う。


これであたしに、軍人相手に切ったり貼ったり突っついたりしろって?


・・・考えるだけでゾッとする!


さすがに女相手だから手加減はしてくれるだろうし、まさか死ぬこともないだろうけど。


でも怖いものは怖いんだよぉ!


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫人! 前へ!」


・・・ぎゃっ!? なになに!? もう始まってたの!?


名前を呼ばれてビクッと周囲を見回した。


いつの間にか、見物の貴族たちが大人数で周りをグルーッと取り囲んでいる。


ひー!? すき間なくビッチリ包囲されてる!? 逃げ場もなしか!?


ものすごい数の目ん玉が、あたしに注目してる~!


もうこの状況がすでに怖い! 視線に串刺しにされちゃいそう!


「さあシーロッタ・ヌゥーキー男爵夫人!」


「は・・・はいぃぃ・・・・・・」