バカの体が、勢いよく横倒れにぶっ飛んでいく。


あたしはキョトンとして、引っくり返って目を回しているバカ旦那を見た。


あ・・・・・・

あれ? なんだっけ。なにが起こった?


これって・・・あたしがやったの?



・・・しばらくして、やっと我に返った。


バカだんなを殴り飛ばした自分の拳を、まじまじと見る。


どうやら毎日の過酷な水汲み作業が腕力を鍛えたみたいね。


知らないうちに強烈な破壊力が宿っていたみたい。まさに黄金の右腕だわ。


心の中で奥様に感謝しながら、ジンジンする右手をブラブラ振る。


痛~。関節が、ものっすご痛い~。


この分じゃ、バカだんなの頬も相当なダメージ受けてるわね。同情する気はまったく無いけど。


しかし、このロリが目が覚めたら面倒なことに・・・。


面倒、な、ことに・・・。


・・・・・・!


そうよ! 本当に面倒なことになる!


このままじゃあたし、バカだんなの生贄だわ!


すぐに逃げなきゃ!


でも、チラリと頭の片隅に「どうしよう」って考えが浮かんだ。


奴隷の逃亡は重罪だ。捕まればただでは済まない。


主人には、罪を犯した奴隷を処刑する権利だって与えられている。


逃げたところで、どこへ行く? どこにもあては無いし、その先どうするの?


じゃあ・・・

あたしはこのまま、変態の餌食になるのを選ぶ?