タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「王様の、お成りーーー!!」


その時、会場の喧騒を掻き消す朗々とした声が響き渡った。


途端に音楽がピタリと止んで、人々の視線が一カ所に集中する。


・・・来た!? 王様のお出まし!?


ついに始まる! しっかりしなきゃ!


入り乱れていた貴族たちの群れが、ススッと左右に分かれた。


そして厳粛な様子で深々と頭を下げる。


あたしとブランも慌てて端に寄り、見よう見まねで頭を下げた。


国王なんて、本来だったら、一生お目にかかる事なんてない雲の上の人。


好奇心に駆られてチラッと目線を上げ、盗み見た。


(・・・うっわあぁ・・・・・・)


濃いブルーの艶やかな衣装が真っ先に目に飛び込んできた。


金やら銀やら、赤やら緑やら、何色もの細っかーい刺繍がびっちり。


あの服一着作るのに、いったいどれほどの金と労力を費やしたことか。


そして王様が身に着けているマント。


金色に輝くて分厚くたっぷりした、裾を引きずるほどの毛皮は・・・。


あれ、タヌキの毛皮だ。


あれだけの大きなマントを作るには、相当な量の毛皮が必要だ。


つまりそれは全部タヌキたちの、死・・・。


ギリッと、歯ぎしりする音が隣から聞こえた。


ブランがすごい目つきで王様を睨み上げている。


彼にとっては、王様は敵の総大将でもあるわけだ。さぞかし憎い相手だろう。