タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

クッ、と、あたしの唇の端が上がった。


うつむく顔に自嘲の笑いが込み上げる。


・・・バカみたい。


そうだよ。おタヌキ王から白タヌキの伝説の話を聞いた時、自分で思ったじゃないか。


どこの世界に、タヌキに恋愛感情をもつ物好きがいるのか、って。


逆から見れば当然、タヌキが人間にそんな感情をもつはずもないんだ。


しょせん、タヌキはタヌキ。人間は人間。


絆とか、信頼とか、繋がりとか。


そんなものを期待して、ひとりで幻覚をみて、浮かれたり沈んだりしていた自分が情けない。


そして、みじめだ。


耳から遠ざかっていた音楽や人々の喧騒が、現実味を帯びて聞こえ始めてきた。


あたしの表情にはもう、微笑みも自嘲も、なにも無かった。


ただ明確な決意と、そのための計画だけが、心の中にあった。