「ずっと、こうしていられたらいいのに・・・」


思わずポツリと本音が漏れる。


現実のなにもかもすべてを忘れて、放り投げたいと思った。


純粋で優しく、可愛いタヌキ達との生活は、とても心地良い。


自然はもちろん厳しいけれど、これまで感じたことのない穏やかさと充実感がある。


こんな生活をずっと続けるのも、悪くないって思ってしまうほど。


「いられるさ。ずっと。いつまでも一緒に」


あたしの隣に寄り添う、何も知らずに微笑む美しい少年。


その横顔を見るたび、優しい言葉を聞くたび、あたしの心は暗くなる。


隠し事。偽り。嘘っぱち。

だからそんなものは・・・


いずれ壊れる時が来る。


分かっていながら、あたしは見て見ぬふりをし続けた。



だけど、ついに婚約披露パーティーの日が来てしまった。


生き残るために、あたしがタヌキたちを裏切る時が。



「いよいよである。皆、気を引き締めていくであるよ!」


おタヌキ王の前に一列に並んでいるタヌキ精鋭部隊。


今回の作戦で、あたしとブランに付き添ってくれる部隊だ。


どこらへんが、どう精鋭なのかは分からないけど、みんな緊張感のある顔をしている。


もう最近ではすっかり、タヌキの表情が読めるようになってしまった・・・。


「タヌキ一族の命運のため、必ずや勝利をつかみます! おタヌキ王様!」


「白騎士、ミアン、精鋭部隊よ、しっかりと頼んだである!」


山のタヌキ総出の盛大な激励に見送られ、あたしたちは山を後にした。