鳥の巣穴から、おタヌキ山へ戻ってから・・・


あたしはブランやタヌキ達と、自然の中での共同生活を続けていた。


あたしのためにブランは、毎日木の実を採ってきてくれる。


「嫁の食いぶちを稼ぐのは、夫の仕事だからな」


って、妙に自慢そうにしてるブランの姿がおかしくて・・・。


そんなブランの姿を見るのが、内心、とても嬉しかった。



おタヌキ王と、お互いの身の上話もした。


おタヌキ王も親を人間に殺され、ずいぶん苦労して、今の王の地位にのし上がったらしい。


あたしの境遇を聞いて、自分の境遇と重ねてウルウル泣きながら、慰めてくれた。


そして一日の終わりの夕暮れ時。


山の高原で、ブランとふたり並んで座り、肩寄せ合って夕日を眺める。


それがあたしたちの日課になった。


広い広い起伏のない高地に風が吹くたび、草原が波のようにザワザワと揺れる。


名前も知らない、薄紫や、黄や、赤い小さな花の群れ。

漂う草や土の香り。


すぐ近くに見える、黄昏に彩られた空が、あたしの心を解きほぐしてくれた。


全ての空気を染めあげる夕日が、悩みも、苦しみも、一緒に塗りつぶしてくれそうな気がした。