「でもこれからは独りじゃないぞ。お前はオレの嫁なんだからな」


「・・・・・・・・・・・・」


「ミアンとオレは、ずっとずーっと一緒に生きて、共に戦っていくんだ。今日みたいにな!」


明るい、嬉しそうなブランの声。


じんわりと温かかったあたしの心が、一瞬で沈み込んでしまった。


ブランの優しい言葉に正直に答えることができない。


それが・・・ひどく、堪えた。


あたしはタヌキを犠牲にしようとしている。


でも勝って生き抜く行為は、恥ずべき事じゃない。


決して恥ずべき行為ではないはずだけれど。


あたしが、これからタヌキたちに対して挑む行為は・・・。


本当に『戦い』と呼べるものなんだろうか・・・。


もちろん、そうしなければあたし自身が生き残れない。


いくらブランが守ってくれても、いつかはバカだんなに見つかって捕えられてしまうだろう。


そもそも、人間がタヌキとして生きていくなんて、不可能だ。


分かり合えている?

本当に、あたしたちは分かり合えているの?


・・・・・・・・・・・・。


・・・嘘だ。うそっぱちだ。


「ミアン、見ろ。夕日だ」

「・・・・・・」

「もうすぐ日が沈む。急いで帰ろう」


山全体と、あたしたちの身を染めつくすほどの黄昏。


オレンジと金に包まれ、走り出すブランの全身が美しく輝く。


あたしは、そのあまりの穢れの無さにためらいながらも、彼にしがみついて目を閉じた。