タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「ちちっ」


「あ? それに今はそれどころじゃないんだ、って? どういう事だよ?」


「ちっ」


「話す気はない、だって? いいから教えろ。こっちだって一族の存亡がかかってるんだ」


「ちちちっ」


「自業自得だと!? 勝手なこと言うなよ! 黙って聞いてりゃ調子に乗って!」


「ちょっとちょっとブラン!」


あたしは慌てて止めようとした。


あんたがケンカ腰になってどうすんの。


それに、向こうの言い分はもっともだよ。こっちは反論なんてできないよ。


「だからさ、ここはひとつ一族を代表して、心からの謝罪を・・・」


ブランはキッと振り返り、叫んだ。


「オレたちは、なにも悪いことなんかしていない! 謝罪する必要などない!」


「うわわ、だからそんな事を大声で・・・」


「オレたちはすべて、自然の一部なんだ!」



弱きものは強きものに食われ。


強きものは、さらに強きものに食われ。


そしてその強きものが、いずれ死を迎えた時・・・


その体は弱きものの糧となる。


そうして自然は回っている。


この世の生き物すべて、その輪の中で生きている。


それは、謝るべきことなのか?


この輪の中で生きていくことを


世の命は皆、だれかに謝罪しなければならないのか?



「それは絶対に違う。それは、命に対する侮辱だ。そうだろう?」

「ブラン・・・」


あたしは、言葉に詰まってしまった。


ブランの言った言葉が胸にズシリと重く響いた。


生き物は、みんな戦って生きている。タヌキも、鳥も、人間も、みんなそう。