タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

ぶわあぁっと、体が浮き上がる!


っていうかもう、すでに飛んでる状況! 空を移動してる!


風が全身に吹き付ける! 足の下に地面がないー!


下を見ると、すごいスピードでみるみる地面が遠ざかっていく。


でもまだまだ上昇していく! あまりの高さに、腕の痛みも忘れて叫び続けた。


「怖いー! 地面が遠い! 目が回るぅー!」


「下ばっかり見てるからだよ。上見ろ、上」


「そんなこと言ったってー!」


あたしは半ベソかいて上を見上げた。


あんなに遠く小さく見えた鳥の巣穴が、すぐそこまで接近している。


ってことは、それだけ高所にいるってこと!? もしもここから落ちたりしたら・・・。


か、考えないよう無我の境地でいるから、早くあそこまで連れて行ってえぇ!


鳥の巣穴は間近で見ると、下から見た時とは想像できないほど大きな穴だった。


小部屋くらいの入り口が、ポッカリ口を開けている。


その穴に向かってブランはどんどん接近し、反動をつけてあたしを勢いよく放り込んだ。


――ぶうんっ!

「ぎゃああぁぁっ!?」


空中で放り出され、あたしの血の気が一気に引いた。


完全にパニックになり、宙を飛びながら全身がビキンと硬直する。


そしてあたしはそのまま、巣穴の中に顔面からズザアーッと大胆に滑り込んだ。


滑った体が停止して、冷や汗がドッと噴き出す。擦れた顔の皮膚がヒリヒリした。


・・・生きてる? 生きてるよね? 痛覚があるってことは、生きてるんだ。


ぐすっ・・・良かった・・・。良かっ・・・


「よし、無事についたな」

「無事じゃないわよ全然!」


あたしはガバッと起き上がり、タヌキの姿に戻ってテクテク歩いてくるブランに怒鳴りつけた。