どこをどんなに探しても、ふたりの消息は分からなかった。


少年の方はともかく、少女はおそらく山に入ったと思われる。


だから徹底的に、しらみつぶしに探したというのに。


どうしても見つからない。

どこにもいない。


まるで煙のように、姿を消してしまったのだ。


不思議なことに、少女が姿を消したその日から・・・


山の全ての木々に花が咲き乱れ、一晩で大量の実が成った。


その果実は、作物が壊滅して飢えた国民の命を救ってくれた。


そのおタヌキ山を中心に、まるで命が復活するかのように、少しずつ緑が、大地が回復していった。


「なんの手がかりも見つからないの?」

「それが・・・・・・」


王の問いかけに、家臣が困惑したような表情で答える。


「噂を、聞くのでございます」

「噂?」


山のふもとの町の中で。


もうずっと、人々の間にささやかれる噂話がある。


雪のように真っ白なタヌキを、頭の上に乗せた少女が・・・


軽やかに町を駆け抜けていくのを見た者がいるという。


黄昏の山の草原で、白い髪の少年とドレイ服の少女が・・・


ぴたりと寄り添い、沈む夕日を幸せそうに眺めている姿を見た者がいるという。