「ど、どうしたであるか!? ミアン!」


「なんだ? ミアンはネズミよりも虫の方が好きだったのか?」


白タヌキ少年が、ネズミの死がいをムンズと鷲づかみし、あたしの目の前にぬうっと突き出した。


ひっ! ネ、ネズミの死がいが、鼻先4センチまで接近中!


小さな手足も、シッポも、体毛の生え具合まで、つぶさに観察可能!


おまけに臭いまでバッチリぃぃ~!


「まるまると肥えた、いいネズミだぞ? さっきまで生きてたから新鮮だ」


「ひ・・・ひぃぃ・・・」


「好き嫌いは体によくない。ほら、ちょっと恥ずかしいけど・・・あーん」


ネズミ突き出して「あーん」されても、全然うれしくない!


息を止めたまま全身を硬直させて、涙まじりに必死に首をプルプル横に振る。


それを見た白タヌキ少年が、小首をかしげた。


「大丈夫だって。ほんとにうまいから。見てろ、ほら」


そう言うと、あぁ~~んと大きな口を開けて・・・


自分の口の中にネズミの死がいを突っ込んだーー!!


「ぎゃー! な、なにしてんのよ、あんたはー!!」


――バッチーーーーーンッ!!


あたしの黄金の右ストレートがさく裂した。


平手打ちの強打を受けた白タヌキ少年が、口からネズミを噴き出しながらぶっ倒れる。


「おわ!? 何をするであるかミアン!?」


「離婚よ離婚! 今すぐ離婚ー!」


「離婚って、これから結婚の誓いの口づけをするところ・・・」


「ネズミ突っ込んだ口となんか、だれがキスなんかするもんかあー!」


やっぱりタヌキ! 絶対タヌキ! どこまでもタヌキ!


どんなに美少年でも、結局タヌキに変わりない!


絶対に、あたしはコイツの嫁だなんて納得しないからねー!