空を仰いでいたオルマさんの顔が、ゆっくりとこちらに向く。

彼女はあたしを見て、ふわりと笑った。


「・・・・・・ムダだ」


そして、誇らしげに片手を高く掲げる。


その手には竜神王の目が、しっかりと握られていた。


「これがわたくしの手にある以上、お前の決意はムダなのだ」


「ムダじゃない」


あたしは首を横に振る。


そんなあたしを見て、オルマさんは少女のようにクスクスと笑った。


「お前が何を言い張るのか、わたくしには分からぬ」


「でも、あたしには分かるんだよ。オルマさんの中にある真実が」


「ほう? わたくしの中の、真実?」


「うん。オルマさん、あなたは・・・・・・」


「キミは・・・アザレア姫を愛しているよね? オルマ」


スエルツ王子の声に、オルマさんの表情がピクリと動いた。


「キミはアザレア姫のことを、本当に大切に思っている」


「・・・・・・・・・・・・」


「そのアザレア姫を、自分の手で犠牲になんてできるわけがないよ」


王子の言葉にあたしはうなづいた。


そうだ。オルマさんは・・・・・・姫を愛している。


たぶん、最初は姫を利用するつもりで近づいたんだと思う。


だけどあたしは、確かに聞いた。


マスコールへ向かう船の中で、オルマさんのアザレア姫への気持ちを。