「スエルツ王子・・・・・・」


「うっ・・・うっ・・・」


「セルディオ王子は、たぶん王になりたかったわけじゃ、なかったと思う」


だって・・・・・・

セルディオ王子は、最期に父親に向かって救いを求めた。


必死に父親に手を伸ばしていた。


口では、あんなに王さまのことを悪しざまに罵っていたけれど。


たぶんそれは、彼の本心ではなかったんだと思う。


ただ、父親に自分を認めて欲しかっただけなんだと思う。


王妃さまはセルディオ王子を生んですぐに亡くなってしまったから。


セルディオ王子にとって、親は国王である父親だけ。


その父親に、継承権をもぎ取られてしまって・・・


すごく不安になったんだと思う。


継承権だけじゃなく、愛情までも自分は失ってしまったと感じたんだ。


だから必死に取り戻そうとしたんだ。


反発したのは、思慕の情の裏返し。


セルディオ王子は、兄のことが心底うらやましかったんだと思う。


正当な後継者で、母親の愛情を受けて育って。


どんなに周囲に蔑まれても、いつまでも綺麗な心を決して失わない、強い兄。


きっと・・・この兄こそが・・・


真に王位にふさわしいのだと、賢い彼には分かっていたんだ・・・・・・。


「うらやましかったのは・・・ボクの方だよ。セルディオ・・・」


泣きながら王子はポツリとつぶやいた。


手の中の埃にまみれたペンダントを、強く握りしめながら。