タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「それでは話も決まったところで、さっそく婚儀の準備を始めるのである!」


「ちょっと! なにを勝手に話を進め・・・!」


おおー!っと威勢の良い掛け声と共に、タヌキの一団がパーッと散っていく。


ああぁ、待ってぇ。

みんなそんな、キラキラと嬉しそうに準備に走らないでえぇ・・・。


あたしの意思も主張も、むなしく無視されてガックリ脱力する。


どうしよう。あたしこのまま野生生物の嫁?


笑い通り越して、すでに悪夢の領域。


最悪の人生を回避するために屋敷を飛び出したのに、結局あたしの人生って救いようがない。


このまま嫁入りして、王子の婚約披露に出席して、そして・・・。


・・・・・・・・・・・・。


そして・・・王の目に留まり、権利を手に入れる?


おタヌキ王の言う通り、あの白タヌキの美貌ならそれも十分にあり得ることだ。


もしも本当に下賜の権利を手に入れられるとしたら・・・。


それを横から、あたしがいただいちゃうってのは!?


権利を使って、奴隷の身分から解放させてもらうんだ。


貴族の大反対が予想されるタヌキ狩りの禁止よりも、聞き入れてもらえる可能性は高い。


そうだ! これだ! これしかない! これは究極のチャンスなんだ!


バカだんなの餌食になることも、処刑の恐怖に怯える必要もなくなる。


タヌキたちを利用して、このチャンスを絶対にものにするしかない!