「ひどい・・・・・・」

もうみんな分かっている。


オルマさんが、かつて愛した男。


そしてオルマさんをだました男。


オルマさんとお腹の子を見捨てた男。それが・・・


「父上・・・・・・」

スエルツ王子が、なんとも複雑な声で呼びかける。


そう。我が国の国王陛下。


お腹から血を流し、床に倒れているこの男が、そうなんだ。


「わたくしは地底に落ちた。何人かのマスコールの民も。だが奇跡的に生き延びたのは、わたくしだけ」


「オルマさん・・・・・・」


「お腹の子は、助からなかった」


やっぱり・・・・・・。

可哀想に。どんなに辛かったろう。


「地竜が暴れ、地が荒れた。土地が穢れて魔物が湧いたのだ」


「それでマスコール王国は滅んだんだね」


「そうだ。あっという間に滅んでしまった。それをこの男は、自分の手柄にした」


話では、マスコール王国が自分で魔物たちを呼び出したことになっていた。


戦争に勝ちたいばかりに欲を出して、禁呪に手を出したって。


それをうちの王さまが、勇敢にも竜神王の目の力で、魔物を封印したって。