タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「だ、男爵! 事情はぜんぜん飲みこめてないんだけど、とにかく応援するから!」


「男爵さま! どうかお願いいたします!」


スエルツ王子とオルマさんの激励に、ブランが手を上げて答えた。


そして「行くぞ地竜!」と掛け声ひとつ、強く地を蹴り、地竜に向かって走り出す。


「頑張ってー! ブランー!」


あたしの声を背に、ブランは素早く地竜の前足に接近した。


地竜は当然のように、巨大な足を上げてブランを踏みつぶそうとする。


まるであたしたち人間が、なんの感慨もなく小さなアリを踏むように。


――ズウーーン!


「きゃ!?」「うわっ!」「うひゃあ!」


地竜が地面を踏み鳴らし、あたしたちは大きな振動に引っくり返る。


頭上からバラバラと小岩や大岩が崩れ落ちてきた。


このままだと、本当に洞窟が崩れてしまう!


このバカ地竜! ここが崩壊しちゃったら、あんただってタダじゃ済まないでしょうが!


ものは理屈で考えなさいよ! 理屈で!


理性を失って、前後の見境なく暴れる姿を見ていると誰かを思い出す。


・・・・・・あぁそうだ。


あんたって、バカだんなのところの若奥様ソックリなんだ!


うわぁ、この地竜ってもしかして中年のメスなのかな?


ヒスを起こした中年女って、それ最悪のパターンじゃないの!


だったら手ごわすぎるーー! 怖いもん無しだコイツ!