オジサンが手に持っているカップの中に、赤い色の宝石をポチャンと入れた。


するとシュワッと音がして、カップの中がポッと光り出す。


「ほら薬だ。これ飲んでしばらく休め」


手渡されたカップを覗き込むと、赤い液体が、なんともいえない柔らかな輝きを放っている。


「ありがとう。キレイ・・・」


「おらは仕事があっからよ。ゆっくりしてろなぁ」


「ボクもお礼になにか手伝うよ!」


「おめえはいいわぁ。体だけはデカイけんども、ぜーんぜん力がねえもんよぉ」


そう言って笑いながら、オジサンはノームたちの方へと戻って行った。


こっちを眺めていた他のノームたちも、パラパラとそれぞれの作業に戻っていく。


「さあ男爵夫人、まずは薬を飲んで」

「うん・・・。そうさせてもらう」


恐る恐る口にすると、ほんわりと温かい液体がスッとノドを通る。


ふぅっと息を吐きながら、あたしは回りを見渡した。


本当に、ずいぶん広い洞窟。ノームの数もたくさんいる。


ざわめく生活の音が、鍛冶作業の音に混じって聞こえてくる。


闇と、光と、精霊の織りなす幻想的な地下空間だ。


目を奪われているあたしの横では、王子が胸から下げたペンダントを開いて眺めている。


ニコニコと、それはそれは幸せそうな顔で。


「スエルツ王子、それなに?」


「これ? ・・・見たい? 見たいの? そーんなに見たい?」


「・・・・・・・・・・・・」


これで「見たくない」なんて言おうもんなら、この場の空気がどーなることやら。