「あ! 男爵夫人、気が付いたんだね!」


宝石を手に取って眺めていると、スエルツ王子が駆け寄ってくるのが見えた。


「良かった! 気分はどう!? ボクのこと、分かる!?」


「スエルツ王子・・・・・・」


「うんそうそう! ちゃんと分かるんだね!? ああ良かったあ!」


泣き笑いのような顔をして、王子がヘタリと座り込んだ。


そしてあたしと同じように宝石を手に取って、しみじみと眺める。


「この宝石、本当に解毒作用があるんだね。すごいなあ!」


「解毒作用?」


「うん。ここのノームたちが助けてくれたんだよ」


その言葉にキョロキョロと見回すと、ノームたちがこっちを遠巻きにジッと見ている。


その集団の中から、見慣れた顔がヒョコヒョコと歩み寄ってきた。


「おー。目が覚めたんけぇ?」


「あ、オジサン・・・」


「人間にも効くかどうか分からんかったけんども、良かったなぁ?」


もじゃもじゃのヒゲに覆われた顔が、笑顔になった。


・・・じゃあノームたちがこの宝石で、ハーピーの毒を解毒してくれたんだ。


「あの、助けてくれて、ありがとう」


ちゃんとお礼を言おうと思って、体を起こそうとしたら、また目まいに襲われた。


横向きにパタリと倒れ込んだひょうしに、宝石の中に顔面を突っ込んでしまう。


「うぶっ」

「まてまて。いま飲み薬を飲ませてやっからなぁ」