「男爵夫人! 男爵夫人しっかりしてよ!!」


「はぁ、しかたねえなぁ。見捨てるわけにも、いくめえなぁ」


涙声のスエルツ王子の声と、ため息交じりのオジサンの声が聞こえる。


「タヌキの嫁っちゅーことならよ、おらたちの住みかに連れてっても、いいなぁ」


・・・・・・え?


「本当なら、人間はお断りなんだけんどもなぁ」


「グス・・・、キミ、なにを言ってるんだい?」


「あぁ、おめえさんも、まぁ連れてってやるか。ついでだ、ついで」


オジサンが、またハンマーを軽々と持ち上げる。


そしてクルリと回転させて・・・


――ドオォォーーーン!!


背中にビリビリと振動が走った。


薄れた意識も覚醒するほどの、激しい地響き。


ズズッと不可解な動きが、横たわる床の下から伝わってきて、それが徐々に大きくなっていく。


ズズ・・・ズ・・・ズズ・・・


――ガラガラガラーーー!!


「・・・・・・!?」


いきなりあたしたちの足場が、ガラガラと音をたてて完全に崩壊した。


体がフワリと一瞬だけ浮力を感じる。


その次の瞬間にはもう、破壊されたガレキと共に、深い深い地の底へと落下していた。