産まれてきてよかったと思えることのできる、たったひとつの存在。


ブラン、あなただけよ。あなただけが・・・


ミジメで孤独な色にくすんだあたしの人生を、鮮やかに彩ってくれた。


涙が次から次へと流れ落ちていく。


頬を流れるその感触すらも、もうおぼろげで。


あたしの命の灯が、風に吹かれるように揺らめいて、消えかけているのが分かる。


怖くはなかった。それよりも・・・


ブランの笑顔が、意識の奥で薄れていくのがただ、悲しかった。


なぜあたし、あのとき王様に頼めなかったんだろう。


タヌキたちをどうか救ってくださいって。


あたしのドレイ身分のことなんか、どうだっていいの。


大切なタヌキたちを守れるなら

大切なブランのことを守れるなら


あたしは、どうなってもいいのに。


なにもしてあげられない。


もうなにもできなくなってしまってから、気が付くなんて。


こんなにこんなに一番大切なことに気が付くなんて。


ブラン。ブラン。


唇が、動かない。

あなたの名前すら呼ぶことができない。


せめて呼びたい。そして会いたい。


こんなに、こんなにも、あたしはあなたのことを・・・・・・


最後の力を振り絞り、あたしは大切な者の名を呼んだ。


「ブ、ラ・・・ン・・・」