タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

室内の机やイスがガタガタと派手な音を立てて倒れた。


「きゃああっ!?」

身体が床の上をザザッと滑っていく。


「ミアン!!」

ブランがあたしの体に覆いかぶさるようにして止めてくれた。


「ミアン、ケガはないか!?」

「だ、大丈夫だけど・・・これっていったい?」


慌てて起き上がろうとして、室内の違和感に気付いた。


床が、斜めになっている?


キョロキョロ周囲を見回すと、明らかに部屋そのものが大きく傾いてしまっていた。


と、いうことは・・・


あたしとブランはガバッとお互いの顔を見合わせた。


船自体が、傾いているんだ!


ふたり共、急いで船室から出ようと動き始めた。


明らかに尋常じゃないことが起こっている! すぐに確かめないと!


足に力を入れて踏ん張りつつ、斜めの床を移動して甲板に出た。


一寸も動かず、ビタリと停止している船の甲板のあちこちに、兵士や船員が倒れている。


船のヘリにつかまり、状況を確認したあたしの目に、傾きの原因がはっきりと映った。


・・・岩! 島のような大岩に船がぶつかってしまっている!


なんで!? こんな大きな岩に誰も気が付かなかったの!?


「男爵夫人!」


オルマさんが、ヘリにつかまりながら伝い歩きをして近寄ってきた。


「オルマさん! 無事だったの!?」


「男爵夫人、歌声が聞こえてきます!」


「え!? なに!? 歌声!?」