タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「ブラン、どうし・・・」


そう問いかけたあたしは、衝撃に貫かれたように硬直した。


ブランの手が、あたしのドレスの裾をたくし上げているのを感じたから。


なに・・・なにをするつもり・・・


熱い鼓動が、驚愕の鼓動に変わっていく。


ブランの体温も、髪にかかる吐息も、なにもかもが遠ざかって・・・。


代わりに、あたしの脳裏にあの記憶が浮かんだ。


物置小屋でバカだんなに襲われたときの、あの、忌まわしい記憶が。


心の奥底から、恐怖が湧き起る。


とっさにあたしはブランの体を引き剥がそうとした。


「はなして! はなしてよ!」

「ミアン! ミアン!」

「お願いやめてブラン!」


記憶が重なる。


あの薄暗い空間。


ホコリにまみれた澱んだ空気。


自分の身体をまさぐる、他者の手の動き。


なじめない皮膚の感触。


「ミアン、お前を絶対離さない」


じっとりと熱く湿った、吐き出される息・・・・・・。


すべてが・・・

すべてが、あのときと同じに・・・・・・


「・・・嫌だ! 嫌だあぁぁ!!」