タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

あたしは空いている船室に引きずり込まれた。


バタンと勢いよく扉が閉められ、薄暗い部屋の中でふたりきり向かい合う。


息もつかさず、ブランは力一杯あたしを抱きしめた。


「・・・・・・!?」


あまりの息苦しさに、あたしの頭は真っ白。


この状況は・・・なに・・・?


「ミアン、ミアン!」


苦しげな声で、ブランはあたしの名を繰り返す。


ギュウギュウと締め付けられるような、強烈な抱擁。


その痛みからか、それとも別の理由でか、あたしの胸は激しく鳴った。


『ずいぶんとお前にご執心・・・』


その言葉がグルグル頭の中を回転している。


この強い抱擁。切なく名を呼ぶ声。彼の臭い。伝わる熱い体温。


「ミアン! お前を絶対離さない!」


あたしの心臓が、大きく躍動した。


今にも破裂してしまいそうなほど激しく鳴り響く。


頭が、クラクラする。全身に熱い何かが駆け抜ける。


・・・・・・と、その時。


突然、あたしの体はブランに押し倒された。


背中に当たるベッドの感触が、ふたり分の体重を受けて、大きく軋む音がする。


体全体にブランの体重を感じて、わけも分からずあたしはブランを見上げた。


そこには、まるで何かにとり憑かれたような彼の目。


あたしを見ているようで、見ていない。


そんな目が、突き刺すように鋭くあたしを・・・。