タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

そう言って席を立ち、船室から出た。


甲板に出て広い海を眺め、風に髪をそよがせる。


なんとしてでも秘宝を見つけろって言われても。


手がかりもないのに、どうすりゃいいのやら。


海を眺めても当然、何の案も浮かんでこない。出るのはため息ばかり。


セルディオ王子もムチャなことを言ってくれるよ。


人の弱みに付け込んでさ。


命令すればいいだけのエライ人は気楽なもんね。


言われた人間がどんなに苦労するかなんて、考えも及ばないんだろう。


セルディオ王子の顔を思い出したら、また胸が強烈にムカムカしてきた。


あの整った冷徹な顔。耳にかかる息。ささやかれた声。


・・・・・・あんのやろぉー。


うわ、せっかく復調したのに、また吐きたくなってきた。うえっ。


「男爵夫人、お加減はいかがですか?」


聞き覚えのない声に、あたしは振り向いた。


スエルツ王子の護衛兵らしき人物が、笑顔で近づいてくる。


「心配しましたよ。男爵夫人のお顔が拝見できなくて、ずっと気落ちしておりました」


そう言って腰をかがめ、あたしの手の甲にキスをする。

うわ、くすぐったい。


身のこなし方や服装からして、どうやらただの兵士じゃないらしい。


ちょっとは身分のある家の、次男坊とか三男坊とかなんだろう。