タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「・・・ごめんね。オルマさん」


「なにがでございますか?」


「あたしのせいで、大切なアザレア姫と離れることになっちゃって」


さぞ心配だろう。


姫のために祖国を捨てて敵国に渡ることすらいとわないほど、忠義に厚い人だもん。


「わたくしめが、自分で望んだことでございますから」


オルマさんの髪を梳く手が、再び緩やかに動き出す。


「男爵夫人が、お気に病まれることはございません」


あ、そうだった・・・。


そういやあたし、一応まだ男爵夫人って肩書きだったんだっけ・・・。


ヤバイかな。ここんところ、もうずっと本性丸出し状態だ。


なんかもう、セルディオ王子にバレちゃった時点でどーでもよくなったっていうか。


船酔いのせいで、取りつくろうどころじゃなくなってしまったというか。


たぶんブランも似たような状況になってると思うけど、騒ぎになってる様子はない。


スエルツ王子が、そういうの全然気にしないタイプらしくて。


あの人、自分からして言葉も態度もモロに庶民風だもんね。


オルマさんも普段と変わりないし、いいや、もう。このまま行こう。このまま。


秘宝を探し出して、スエルツ王子に渡す。


それに集中しよう。余計なことに神経使ってる余裕なんかない。


・・・・・・秘宝探索、か。

あたしはため息をついた。


「オルマさん、あたし、ちょっと甲板に出てきます」