タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

オルマさんの手の動きが、ふと止まる。


そして彼女は、どこか遠くに思いをはせるような目をした。


「オルマさん?」

「・・・あ、も、申し訳ございません」

「アザレア姫のこと、心配してるの?」


一瞬複雑そうな表情になったオルマさんが、ふわりと笑った。


「いつも、姫さまの髪をこうやって梳いていたものですから」


「アザレア姫の侍女になって、どれくらいなの?」


「姫さまが十五歳のときからでございます。四度目のご結婚から、お戻りになられた直後から」


「そうなんだ」


「あの方は・・・お気の毒な方です・・・」



国に利用され、親に利用され。


祖国でも嫁ぎ先でも、誰にも、まともに相手にもされない孤独な日々。


でも心根の強い人間だから、決してあきらることなく夢を見る。


いつかきっと、真実の愛を、と・・・。


そしてそのたびに裏切られ。


失意の底に落ちては、再び夢を見て、そして這い上がる。


彼女は強い、強い人だから。

強くなければ・・・・・・


とても生きては・・・・・・こられなかったから・・・。