馬車はしばらく走り続けて、やっと港町に到着した。


独特な潮の香りが覆う船着き場は、人や荷物や出入りする船でごった返し、ガヤガヤと騒々しく賑わっている。


その中の用意された一隻に、あたし達は乗り込んだ。


王子は船が小さいって文句言ってるけど、あたしから見れば十分大きくて立派な船。


お忍びなんだから、豪華な船で出発なんて無理な話だし。


船に荷物が積み込まれる間も、あたしとブランの間に会話はなかった。


お互いを意識しながらも、不自然に距離をとり、視線も合わせない。


やがて出港の時間になり、船はゆっくりゆっくり港から離れていく。


あたしは甲板で風に吹かれながら、遠ざかる岸を見ていた。


遠ざかるにつれて・・・心細さが増していく。


陸はあっという間に見えなくなってしまった。


空は青く、真っ白な帆は風を良く孕み、順調に船を走らせる。


どこまでも広い海原と、続く白波。


そしてあたしの隣には・・・・・・ブランが。


一切の言葉もなく、ふたりは船のヘリをギュッと握りしめている。


・・・・・・耐えられない。


もう・・・あたし、こんなの耐えられない。


耐えられないんだよ!

もう・・・

もう・・・・・・!


「もうダメ限界! うええぇぇ~~!!!」