タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

・・・・・・え?


あたしは自分の耳を疑った。


思わず、至近距離で王子の顔を食い入るように見つめる。


男爵夫人でもなんでもない、奴隷身分のバレたあたしに同行しろと?


なに考えてんのよ、この人。


そんな無言の疑問に、王子は答える。


「いまから別の同行人を用意する時間はない。私がついて行きたいところだが、父上はお許しにならないだろう」


・・・それは、まぁ。

王子ふたりがそろって国を不在にするなんて、許可するわけがない。


「あの男、どうせ秘宝に目がくらんで同行するのだろう?」


「・・・・・・・・・・・・」


「こちらはその方が良い。兄上の護衛兵たちは、秘宝を見つけるつもりなど、さらさら無いからな」


確かにそうだろう。


人気のないスエルツ王子のための秘宝探索なんて、誰も本気じゃない。


だからセルディオ王子は、あたしを同行させたいの?


弱みをにぎって、死にもの狂いで探させるために?


「このことは男に話すなよ? バレたことを知らなければ、欲にかられて張り切って探し出すだろうからな」


恐怖で押さえ付けるより、監視しながら放っておけば、相手は勝手にどんどん働いてくれる。


その方が効率的でリスクも少ない。


ヘタに脅したせいで逃げ出そうとされたりしたら、余計に面倒だ。


「なにがなんでも、秘宝を兄上に見つけてさしあげるのだ。いいな?」