タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「あの男が助かるなら、なんでもするか?」


何度も何度も、ブンブンと首をたてに振った。


する! なんでも言うこと聞く! だからお願い!


お願い! お願い! お願いします!!


「・・・ふむ。どうやらお前は、本気であの男を好いているようだな」

「・・・・・・!!」


王子の言葉に、あたしは両目を見開いた。


今までとは全く種類の違う動悸が、あたしの心臓を跳ね上げさせ、全身を駆け抜ける。


心の中に存在する、密かな感情。


それを見透かされたように、はっきり他人に指摘された。


そして、もうひとりの自分がひどくそれに反発する。


なに言ってるのよ!? そんなわけないでしょ!?


自分のことを、ただの道具としてしか見てない相手を、そんな!


ただのタヌキを・・・あたしは、あたしはそんなバカな女じゃ・・・!


「分かった。あの男は見逃そう。ただし条件がある」


あたしの心中を知る由もない王子は、淡々と耳元で言葉をささやく。


条件? 旅への同行をやめて、下賜を諦めろと?


そしておとなしく処分されろって言いたいのね?


・・・分かった。バレてしまった時点で、もうあたしの命運は尽きたんだから。


そう覚悟を決めたあたしに、王子は意外な言葉を口にした。


「このまま何もなかったように旅に同行し、秘宝を見つけて兄上に差し出すのだ」