タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

あっかる~い、気の抜けるような声。

「遅いよもう! さ、早く出発しよう!」


スエルツ王子が足取りも軽く、こっちへ向かって駆けてくる。


・・・・・・ほんと、実に軽そうね。足も頭も。


自分の弟が、日々の心労でハゲそうなくらい気をもんでるってのに。


「やあ、君がシーロッタ・ヌゥーキー男爵かい!? 噂通りのすごい美男だね!」


「・・・・・・どうも」


「でもなんか君、倒れたんだってね!? 大丈夫? そんなんで」


いやそれあんたに言われたかないよ。


はっきり言って、あんたが一番のネックなんだよ。この旅の。


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫妻。よく来てくれました」

「あ・・・アザレア姫!」


淡いブルーのドレス姿のアザレア姫と、かっぷくの良いオルマさんが近寄ってきた。


姫が真っ先にあたしの手を取り、感謝の言葉を口にする。


「男爵夫人、心から感謝します。ありがとう」


「いえ、そんな・・・」


「今回の旅には、オルマも同行させます」


「え? オルマさんも?」


オルマさんが深々と腰を折り、あたしたちに挨拶をする。


「夫人の同行に、身の回りの世話をする者がやはり必要ですわ」


でもオルマさんは、姫が心を許せるたったひとりの人だよね?


なのに旅に同行させたら、姫が城の中でひとりぼっちに・・・。