タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

うん。そうだね。とりあえず、やるべきことは決まっている。


なにはともあれ、マスコール王国へ行って、無事に帰ってくることを考えよう。


その先を思うと・・・相変わらず不安になるけれど。


あたしは重い気持ちを振り払うかのように、あえて明るい声を出した。


「あ、そうだブラン、お腹すいてるんでしょ?」


「おお! もうハラペコで目が回りそうだよ!」


「アザレア姫からお菓子をいただいたの。すごく高価で珍しいんだって」


あたしは袖口から綺麗な包みを取り出して広げた。丸い形の焼き菓子が入ってる。


「さあ、どうぞ」

「ありがとうミアン」


嬉しそうにブランはひとつ手に取り、ひょいっと口の中に放り込んでモグモグ。

と・・・


いきなり白目を剥いて、バターンと引っくり返ってしまった!


「ブ、ブラン!? どうしたのブラン!?」


・・・まさか、姫を暗殺しようとした毒入り菓子!?


あたしは焦ってお菓子の臭いを嗅いでみた。ツーンと鼻に突く香りがする。


あれ?

この臭い、バカだんなの屋敷で嗅いだことがある。


最近外国から入ってきたばかりの、すごく貴重な調味料だって自慢してた。


『コショウ』ってやつ。しかも、すっごい大量に入ってる。


そっか! 人間には平気でもブランにとっては劇薬みたいなもんだわ!


・・・・・・ホントに、大丈夫なんだろうか? 旅路・・・。


あたしはヒクヒクしているブランを見ながら、また新たな不安要素を抱えてゲンナリしてしまった・・・。