タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「よくもオレの嫁を惑わしたな!? きさまいったい何者だ!」


「だから王子さまなんだってば!」


ブランは聞く耳を持つどころが、ますますボルテージを上げた。


「オレはお前に勝負を申し込む!」


そう叫んで、なんとセルディオ王子の胸倉に掴みかかろうとした。


あたしの顔は一瞬で青ざめる。


ひー!? やめて! 無知って最強!

無鉄砲どころか、大砲レベル!


ああ、このままじゃせっかくのわずかな希望が、こなごなに粉砕されてしまうぅ!


もうこれをとめるには実力行使しかない!


――ドスッ!


あたしの黄金の右手がさく裂した。


王子に気付かれないよう、背後から素早くブランの腰を拳で強打する。


「・・・うっ!?」

と唸ったブランの背中が、ピーンと反り返って硬直した。


「あらあなた、どうしたの!? また持病の発作が!?」


「ううぅ・・・・・・」


「大変だわ! 急いで医者に診てもらわないと!」


あたしはブランの体を強引に引きずって、その場から移動した。


目を丸くしてポカンと突っ立っているセルディオ王子に、声をかける。


「王子さま! 夫を医者に診せますから、今日のところはこれで!」


「・・・あ、男爵夫人、打ち合わせが・・・」


「また明日にでも来ます! 話はその時に!」


それでは、さよーならぁぁー!


腰の痛みに顔を歪めるブランを引っ張り、あたしはなんとかその場から無事に退散した。