タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「誤解をさせたなら謝罪するが、私は神職に就く身だ。心配は無用だよ」


セルディオ王子が穏やかな笑みを浮かべた。


ブランは何が気に入らないのか、ますます不機嫌になる。


「なにをニヤけていやがる! オレの嫁に手を出しておきながら!」


「出されてないって! 勘違いしないでよ!」


手を出されたんじゃなくて、手を差し伸べてもらったの!


セルディオ王子のおかげで、なんとか未来に希望がもてる状況になったんだから!


機嫌を損ねさせたら、それが全部パーになっちゃう!


あたしはブランの背中を押しのけて、前に出ようとした。


「も、申し訳ありません。夫は、まだ遊学から戻ったばかりで、国の事情がぜんぜん・・・」


するとまたグイッと腕をつかまれて引き戻され、さらに怒鳴られた。


「ベタベタするなと言ってるだろ!」

「だれもベタベタなんかしてない!」


頼むからこれ以上、事態を悪化させないで!


「彼に失礼なことしたら、あたしが許さないからね!」


――ビキィッ


と、ブランのこめかみに青筋が浮いた。


怒りに染まって凄みの増した美貌を、ブランはそのまま王子に向けた。