タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

あたしは何も言えずにブランを見上げた。


ブランもまた、何も言わずにあたしを見つめる。


ブランの目、あたしの目。


無言のまま、ただ交わされるだけの視線。


言葉以外の何かを探って、深く覗き込むような瞳。


お互いの瞳に映る自分の姿を、ただ・・・あたしたちは・・・。


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵。お初にお目にかかる」


不意に、セルディオ王子の声が聞こえて、あたしは夢から醒めたように我に返った。


あ、あたし、いったい何を・・・?


「体調を崩していたようだが、もういいのかな?」


ブランは返事をせず、あたしの腕をつかんで強く引いた。


あたしはよろけながら、彼の背後に回される。


あたしを背中に庇うようにして、ブランはセルディオ王子をキッと睨んだ。


「オレの嫁に手を出すとは、いい度胸だ」


・・・・・・げっ!?


ちょ、ちょっとブラン!? あんた・・・。


「お前が誰だか知らんが、ただで済むと思うなよ?」


誰だか知らんって、王子よ王子!


この国の、王子さまなんですけど!