タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「彼女はもう何年もわたくしに仕える侍女です」


「オルマと申します。お見知りおきくださいませ」


「敵国に渡るのを嫌がる侍女たちの中で、オルマだけが望んで付いてきてくれました」


「わたくしめは、アザレア姫さまに忠誠を誓った身にございます」


オルマさんは侍女らしい感情を殺したその表情を崩さない。

でも・・・


「ありがとう、オルマ」


「もったいないお言葉でございます。姫さま」


アザレア姫にお礼を言われた時、少しだけその表情がふわりと和らいだ。


「オルマが教えてくれたのですわ。竜神王の目のことを」


・・・あぁ、マスコール王国の秘宝ってやつね?


よくそんなの知ってたね、オルマさん。


「オルマは博識ですの。各国の王室について非常に詳しいのです」


「王家に仕える侍女として、当然のたしなみにございます」


「竜神王の目を利用して、王子にひとあわ吹かせてやろうというのは、オルマの案なのです」


アザレア姫は、得意そうな顔で言った。


「そのために、先ほど一芝居を打ったのですわ」

「え? お芝居?」


じゃあ、国一番の宝石だの、祖国の伝統だのって?


「そんなの、ぜんぶ嘘に決まってますわよ」


姫はケロ~っとした顔で言い放つ。


うわ、やっぱり大したもんだわ。この姫さま。