タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

『どうして・・・!? なぜ!?』


『兄上、どうか落ち着いてください。きっと父上も内心では兄上をお認めに・・・』


『気休めは言うなよ! あれのどこが認めているんだよ!』


激しく頭を振り、やり場のない感情を吐き出しながら、兄上はさらに叫んだ。


『ボクがせっかくアザレア姫を・・・なのにこんなんじゃ、ぜんぜん意味がない!』


そう言って、兄上は父上の後を必死に追いかけた。


いつも繰り返される、父上と兄上の光景だ。


どこまでも混じり合えない、ふたりの姿。


私が重いため息をつき、振り返ったその先に・・・


『・・・・・・アザレア、姫?』


青い顔をして、侍女と共に立ちすくむ姫の姿があった。



「姫は、全てを聞いてしまわれたのだよ」


「その時わたくしは、スエルツ王子の本心を知ってしまったのです」


アザレア姫が目を伏せながら、そう言った。


本当だったんだ。本当にスエルツ王子は、自分の利益のためだけに、姫を・・・。


姫の心を、道具として利用したんだ・・・。


姫はスエルツ王子を信じていたのに。


それだけを心のよりどころに、ひとり、敵国に渡ってきたのに。


・・・本当だ。どこか、あたしと姫は似ている。


奴隷であることも。

部品であることも。