タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「兄上は焦っておられた。自分の立場を揺るぎないものにする功績が欲しかった」


「我が国と、婚姻関係を結ぶことができれば、それは大きな功績ですもの」


「だからなんとしてでも、アザレア姫を妻に迎える必要があったのです」


そっかぁ。あの浮かれ具合は、そういうことだったのか。


聞けば深い事情があったのね。


「わたくしは・・・信じていたのです」


アザレア姫が悲しそうな声で、ポツリと言った。


「わたくしを愛していると言ったスエルツ王子の言葉を、愚かにも信じてしまったのです・・・」



目を伏せ、ガクリと両肩を落とす姫。


背後に控えた侍女が心配そうに様子を伺っている。


王様と渡り合った時とは打って変わった頼りなげな顔で、姫はポツポツ話し始めた。



わたくしは、一国の姫。


王室に生まれた自分の立場と役割は、承知していました。


つまり、政治の道具。


姫など政略結婚の道具にすぎません。


わたくしが最初の婚姻をしたのは、わずか6歳の時。


でも嫁いだ国と祖国が戦争になり、強引に離婚させられ、帰国しました。


7歳でまた別の国へ嫁がされ。


8歳で夫が戦死してすぐに、夫であった人の弟と婚姻させられました。


でもその国とも祖国が戦争になり、また離婚させられ、帰国しました。